【必見】ドミューン主宰の宇川直宏展に行ってきた【生成AI時代のクリエイティブ】

2023年9月10日から11月5日の間、DOMMUNE(ドミューン)主宰の宇川直宏の展覧会が練馬区立美術館で開催されています。

1980年代末より映像作家、グラフィックデザイナー、VJ、文筆家、キュレーターなど多岐にわたる活動をしている宇川直宏。

そんな彼が2022年後半から急激に普及した生成AIに着目し、描くとは何かのアップデートを図った展覧会ということで、さっそく練馬区立美術館まで体感しに行ってきました。

「宇川直宏展|FINAL MEDIA THERAPIST @DOMMUNE」は、コロナ禍以降のプロジェクトを中心に構成されている宇川直宏本人にフォーカスした展覧会です。
ジェネレーティブAIや、ロボットアームと人口知能による空間絵画を創出し“描く”という行為のアップデートを図った作品が多数展示されています。

2010年の開局以降、数多くのアーティストのライブやトークショー、DJプレイなどが生放送でおこなわれているDOMMUNE。

そんなDOMMUNEの膨大に蓄積された映像素材を、絵画や立体作品といった他のメディアに拡張、変換、創造した作品は、圧巻の一言でした。

音楽やファッションカルチャーが好きな人はもちろんのこと、生成AIやブロックチェーン、NFTなどのweb3領域の活用に興味がある人も必見のインスタレーションです。

僕自身、2023年1月から画像生成AIのMidjourneyを使い倒したり、ChatGPTでのタスク一部自動化を試みたりと生成AIに触れ続けていることもあり、とても刺激的な内容でした。

今回の記事では、生成AIの文脈での本展の紹介を中心に書いていきます。ぜひこの記事で予習をして実際に足を運んでみて頂けると嬉しいです。

では、いきましょう!

「宇川直宏展|FINAL MEDIA THERAPIST @DOMMUNE」とは

【必見】ドミューン主宰の宇川直宏展に行ってきた【生成AI時代のクリエイティブ】

宇川直宏の展覧会「宇川直宏展 | FINAL MEDIA THERAPIST @DOMMUNE」が、2023年9月10日(日)から11月5日(日)の期間中、東京・練馬の練馬区立美術館で開催されています。

「宇川直宏展 FINAL MEDIA THERAPIST @DOMMUNE」は、DOMMUNEとして12度目となる展覧会です。

本展は、13年間のDOMMUNEの膨大な番組アーカイブを紹介するとともに、それらの映像を素材として、絵画や立体作品などを通して、“描く”という行為のアップデートを図ったインスタレーションとなります。

写真撮影は可能でしたが、動画撮影は禁止でした。
映像作品や、ライブでの生成AIによる空間絵画作品など実際に足を運んで体感することで感度が段違いに上がる展覧会です。

【イベント詳細】

会期2023年9月10日(日)~11月5日(日)
休館日月曜日(ただし、9月18日(月祝)、10月9日(月祝)は開館、翌9月19日(火)、
10月10日(火)は休館)
開館時間10:00~18:00 ※入館は17:30まで
観覧料一般1,000円、高校・大学生および65~74歳800円、
中学生以下および75歳以上無料
障害者(一般)500円、障害者(高校・大学生)400円、
団体(一般)800円、団体(高校・大学生)700円
ぐるっとパスご利用の方500円(年齢などによる割引の適用外になります)
※一般以外のチケットをお買い求めの際は、証明できるものをご提示ください。
(健康保険証・運転免許証・障害者手帳など)
※障害がある方の付き添いでお越しの場合、1名様までは
障害者料金でご観覧いただけます。 ※団体料金は、20名様以上の観覧で適用となります。
※当館は事前予約制ではありません。当日、チケットカウンターでチケットをお求めください。
アクセス西武池袋線中村橋駅下車 徒歩3分
引用:練馬区立美術館HP

ドミューンとは

引用:DOMMUNE

DOMMUNEとは、宇川直宏が2010年3月1日にDIYで開局した、日本初のライブストリーミングスタジオ兼チャンネルです。

開局と同時に記録的なビューアー数をたたき出し、国内外で話題を呼び続けたDOMMUNE。

そんなDOMMUNEは、その後も発信を続け、開局14年目となる今でも、国内外のアーティストや文化人、学者などジャンルをこえ様々な出演者のコンテンツを配信し続けているモンスターチャンネルです。

番組は月曜~木曜日にかけて平日毎日配信され、国内外の様々なゲストを迎え開催される19時から21時のトーク・プログラムと、世界各国のDJやミュージシャンが演奏する21時から24時のミュージック・プログラムの2部で構成されていて、日本だけでなく、世界でも圧倒的な人気と視聴者数を誇っています。

生成AIとは

本展で鍵となっている生成AIとは、大量のデータを学習した学習モデルが、画像、動画、文章、音声、プログラムコードなど、さまざまなコンテンツを生成することができる人工知能のことです。

生成AIはジェネレーティブAIとも呼ばれています。

従来のAIは、「学習させたデータの中から適切な回答を探して提示する」性質であるのに対し、生成AIは「データのパターンや関係を学習し、新しいコンテンツを生成する」性質があります。

よく知られている生成AIサービスとして、テキスト生成AIのChatGPT、画像生成AIのMidjourneyBing Image Creatorなどは耳にしたことがあるのではないでしょうか。

生成AIは、使い方次第で自分の分身を複数つくりだしたり、自分にはないスキルをもった専属のエンジニアや絵師をパートナーにできるようなものです。

生成AIは、それに触れ続けていくことで、自分自身のクリエイティブを拡張してくれる貴重な相棒になります。ぜひチャレンジしてみてくださいね。

「宇川直宏展|FINAL MEDIA THERAPIST @DOMMUNE」に行ってきた

では、ここからは「宇川直宏展|FINAL MEDIA THERAPIST @DOMMUNE」に実際に行ったレビューを書いていきます。

2010年の開局当初から楽しませてもらっているDOMMUNE。

そのアーカイブや、それらの映像を素材とした、絵画や立体作品などが直接体感できるということもあり、胸を躍らせながら2023年9月15日に練馬区立美術館に足を運びました。

まず、館内での撮影ですが、複数ある内の最後の展示室以外は、写真撮影は可能でしたが動画撮影は禁止されています。

この展覧会は、多くの動きのある立体作品や、ロボットアームと人口知能による空間絵画など動きのある作品を体感することが最大の魅力なので、実際に足を運ぶことをオススメします。

「ポッドキャストと連動したマッサージチェア」
「巨大拡声器付き真空管テレビによるヴィデオストリーミング」
「VJパフォーマンスをストリーミングしたスイッチングインスタレーション」
「1000人のDJによるライヴストリーミング」

第0章から第11章までを、各章で各々のテーマ性をもって展示されていました。

今回は、その中で特に印象に残った3つの作品をご紹介。

ジェネレーテブAIによる空間絵画システム

本展でもっとも印象に残ったプログラムが、ストリーミングロボットカメラを使った「ジェネレーテブAIによる空間絵画システム」でした。

これは、ロボットアームカメラが映し出した被写体を瞬時に生成画像に切り替えるプログラムを組むことで、描写が変化していく絵画作品です。

部屋全体に多数用意されたスクリーンやモニターに瞬時に生成された絵画が映し出される様は、とてもクリエイティブで刺激的。

自分自身が被写体として作品の一部になる体験はとてもワクワクでした。

別日にDOMMUNEで開催されていた「PRIVATE VINYL LESSON」という公開生配信では、「ジェネレーテブAIによる空間絵画システム」の展示室で、LicaxxxやGONNOがDJプレイを披露していました。

ロボットアームカメラがDJ陣を映し出すことで、DJ陣が生成AIにより変化する様がとても斬新で、新しい映像作品だと感じました。

POST PANDEMIC THEATER

「POST PANDEMIC THEATER」は、2019年~2022年のコロナ禍 前/後のDOMMUNEのプログラムが壁一面に貼られたアーカイブ作品です。

DOMMUNEで日夜配信されている膨大なプログラムのジャンルの幅、密度の濃さ、多様な背景の人々の存在を感じ、とても圧倒されるとともに、それを継続し続けている宇川さんの“現在”芸術にただただ心を打たれました。

DOMMUNEは多くのアーティスト・発信者にとって「環状交差点」のような役割を果たしているのだと感じたプログラムでした。

DOMMUNE GENERATIVE AI / HUMAN

「DOMMUNE GENERATIVE AI / HUMAN」は、DOMMUNEをテーマに生成された画像(絵)をもとに人間がその画像を描きなおすプロジェクトです。

「DOMMUNE GENERATIVE AI / HUMAN」の部屋のみ、写真撮影が禁止されていたため、画像でお伝えすることはできないのですが、実際に女性の絵描きさんがライブペイントを行っていました。

ライブペイントでは、DOMMUNEをテーマに生成AIがはきだした画像を参考に、絵筆で絵描きさんが再度描きなおしている最中でした。

画像生成AIの作品は、とても描写が細かく、精巧な画像。

そして、それを人間が描きなおすことで、細かい描写部分の手触り感や、絵の厚みのようなものを改めて感じる機会となりました。

絵描きさんが描きなおした絵には、和食のお出しのような深みを感じました。
生成AIによる画像を人間の手によって描きなおすことでの、生成AI画像と、人間の描く絵の対比をライブで感じられるプロジェクトでした。

展覧会の会期中も、随時生成AIによる画像は増殖していき、壁一面に埋まっていくとのことなので、ぜひ直接見に行って確認してみてくださいね。

おわりに

今回は、「宇川直宏展|FINAL MEDIA THERAPIST @DOMMUNE」について、体験ベースで解説していきました。

DOMMUNEのアーカイブを通して、生成AIによる表現のアップデートを図った展示がどのような内容だったかお分かり頂けたのではないでしょうか。

僕自身、2023年に足を運んだ展示、インスタレーションの中で一番心を動かされた印象的な展覧会となりました。

それは、これまでに宇川さんが歩み、積み上げてきた歴史・足跡自体が1つの芸術作品として圧倒的で、一朝一夕に成し遂げる類の作品ではないこと。また、名声を得てもなお、新たなテクノロジーを駆使してアップデートを図り続けている態度や姿勢に心を打たれたからに他なりません。

11月5日の展覧会終了まで、まだ後1か月半ほどありますので、ぜひお時間を見つけて足を運んでみてくださいね。

今後もchannel IVYでは生成AI関連の記事も投稿していきますので、ぜひお楽しみに。

では、また。