テクノロジーと音楽・映画の祭典「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」が、3月10日〜19日(米テキサス州オースティン現地時間)に、米テキサス州オースティンで行われました。
そのSXSWの1つの催しとして行われたのが「メタバース・ミュージック・コンサート」。
日本からTERIYAKI BOYZ(VERBAL、ILMARI、RYO-Z、WISE)が参加するという情報をキャッチしたので、ライブが行われたメタバース空間へ遊びに行ってみました。
TERIYAKI BOYZのVERBALは、音楽家でありながら、アンブッシュ(AMBUSH®)のクリエイティブディレクターも務めている人物です。
また、テクノロジーを駆使したアプローチを常にしており、NFTやメタバース等のweb3領域にも積極的にチャレンジしています。
アンブッシュのNFTファッションについてのアプローチは、NFTファッションで先陣をきる国内ブランド3選【ファッションギーク向け】で詳しく書きました。ぜひ読んでみてくださいね。
今回のイベントは、VERBALのSNSでの発信で知りました。
(SXSWのメタバースライブなんて、ワクワクしかないじゃないか…というファーストインプレッションでした)
この記事では、「メタバース・ミュージック・コンサート」について、また体験記を書いていきます。
結論、現実世界の音楽フェスやライブとは全く異なる可能性を秘めたコンサートでした。
「メタバース・ミュージック・コンサート」とは
「メタバース・ミュージック・コンサート」とは、テクノロジーと音楽・映画の祭典「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」で行われた音楽イベントです。
SXSWの期間内の3日間、TERIYAKI BOYZ、Infected Mushroom、Paul Oakenfold、COASTCITY等の世界中のアーティスト12組が参加しました。
このイベントは、Active Theory社のDreamwaveプラットフォームで構築された「SOUND WAVES WORLD」というメタバース上で開催されました。
Dreamwaveプラットフォームは、アンブッシュのメタバース「AMBUSH® SILVER FCTRY」にも採用されています。
「SOUND WAVES WORLD」は、テキサス州オースティンの有名な6番街にインスパイアされたカスタム仮想空間とのことです。
その仮想空間を、ウェブブラウザやスマホなどのマルチデバイスから、無料でアクセスできます。
アーティストを映し出す技術は、ボリュメトリックキャプチャ技術(被写体を3次元で動画のように撮影・計測する手法)を駆使した作品となっており、ライブ中のアーティストの真下や裏側からライブを感じられる点がとても新鮮でした。
ユーザーは、メタバース空間を探索し、他の参加者とチャットしたり、多数の(素晴らしい)アーティストによる実物大の写実的な音楽パフォーマンスを体感できる、そんな音楽イベントです。
「メタバース・ミュージック・コンサート」体験記
僕が参加したのは、3月15日の18時(日本時間)。
出演アーティストは、TERIYAKI BOYZ、Infected Mushroom、COASTCITYの3組でした。
僕自身、Decentraland(ディセントラランド)やCluster(クラスター)での音楽イベントには遊びにいったことはありますが、名の知れたメタバース以外での音楽イベントへの参加は初めてとなります。
Travis ScottやPost Malone、Ariana Grande、米津玄師などのメタバースライブをYouTubeで見ることはありましたが、実際に参加して、他のユーザーとコミュニケーシンを図ったりすることは初めて。
そのため、「日本人はどのくらいいるかな?」「そもそもどのくらいの人が集まっているんだろう?」といった心境で「SOUND WAVES WORLD」にアクセスしました。
SOUND WAVES WORLDの基本機能
まず、SOUND WAVES WORLDの基本機能を簡単に紹介します。
基本機能は、cluster、Roblox、Decentralandなど他のメタバースと比べて、かなりシンプルな機能でした。
基本機能は4つ。
- エモート
- テキストチャット
- 「UIの基本カラー」「視点切り替え」「音量」の設定
- アバターの色と表情の設定
エモート
エモート(アバターが動いたり踊ったりする感情表現)は9種類ありました。音楽イベントでの使用を考慮されてか、レゲエダンスの「腰打ち」や、ブレイキンの基本ステップ「6歩」なども。
テキストチャット
チャット機能は、音声チャットはなくテキストチャットのみ実装されていました。
参加者の多くが手探りな状態で参加していたようで、特にテキストのやりとりは盛り上がってはいませんでしたね…
「UIの基本カラー」「視点切り替え」「音量」の設定
基本設定は、「UIの基本カラー」「視点切り替え」「音量」の設定です。
視点に関しては、他のメタバースでもよくある「1人称視点」「3人称視点」の他に「空中からの視点」がありました。
「空中からの視点」は、鳥になった気分を味わえて、一瞬楽しかったのですが、すぐに飽きてしまいました…。
アバターの色と表情の設定
アバターは、6つの表情と7色のボディカラーを選択できました。
ここは、一番発光がきれいに出ていた「緑」と「スマイル」でいくことに。
準備もできたので、後はライブスタートを待つのみです。
ライブスタート!
TERIYAKI BOYZ
1組目が、いきなりの「TERIYAKI BOYZ」。
僕自身、20代の頃に音楽ライターのアルバイトをしたり、ヒップホップ畑で20~30代を過ごしていたので、VERBALのクリエイティブには色々触れてきました。
(特に「L Universe」名義の楽曲が好きでした)
そういった背景もあり、もちろん今回の新しい試みにも心をおどらせていました。
ライブスタート。
曲は代表曲の1つ、「TOKYO DRIFT」。イントロを聞いただけで「始まった!」感がありましたね。
ボリュメトリックキャプチャ技術(被写体を3次元で動画のように撮影・計測する手法)でとられた4人の映像はブラウザ越しで見ても、迫力満点。
街並みとあいまって、ライブ感は十分にありました。
参加者は、ざっと50人くらいだったと思います。想像よりは少ない人数でしたが、閑散としている様子はなく、参加者はしきりにエモートを出し合って遊んでいた点が印象的でした。
僕自身、海外のメタバースプラットフォームに訪れる際は、テキストチャットで「おはよー」「hi」と2種類の挨拶をしているのですが、日本語でのリアクションはゼロ。
テキストチャットはほぼ英語で埋め尽くされていたので、日本人は3~5名くらいしかいなかったかな。(僕の他に日本語で挨拶をしていたのがもう2名でした)
ちなみに、テキストチャットで「おはよー」「hi」の2種類で挨拶をする理由は、2つ。
「おはよー」・・・日本人がそこにいるのかを知るための挨拶。たまに日本語で返答がくると嬉しい。
「hi」・・・海外発のプラットフォームは海外の人が多いので、そこにむけての挨拶。
曲の途中で、4人の足元から背面を攻めてみました。どの角度から見ても結構リアルな映像でしたね。
TERIYAKI BOYZのライブはこの1曲のみ。特に映像や音声の遅延もなく、総じて、メタバースライブの可能性を感じることができました。
COASTCITY
つづいては、プエルトリコ出身のCOASTCITY(コーストシティ)。
正直、存じ上げていなかったアーティストですが、メタバース空間の街並みや空の色と一番マッチしていたパフォーマンスでした。
COASTCITYも、「Futuro」という曲のみを披露してしていました。
上記動画は、必死に楽しみ方を探して走ったり、ジャンプしたり試行錯誤を繰り返している動画です。
Infected Mushroom
トリは、Infected Mushroom(インフェクテッド・マッシュルーム)。
「Saeed」という楽曲のパフォーマンスでした。こういった打ち込みのサウンドだとエモートが出しやすくて、いいですね。
3組の中で一番の参加者数だったのかな。この時にはTERIYAKI BOYZの時より人が増えてきていました。
参加してみての振り返り
この日は3組のパフォーマンスで、計20分くらいのイベントとなりました。
あっという間の20分間でしたが、メタバースライブならではの楽しさを実感できた点は、とても有意義な点でした。
現実世界のライブでは感じることができない点を探りながら、参加していましたが、
「アーティストとの距離感を選択できるため、現実世界ではあり得ない場所からライブを楽しめる」
この点は魅力だと感じました。
逆に、メタバースライブの課題もいくつか見えました。
特に感じた点は3つです。
- アーティストがその瞬間、実際にライブをしていないので、アーティストとの一体感は感じにくい
- パフォーマンスの始まりや終わりに演出がない為、高揚感や終わった後の満足感が感じにくい
- 高音質でないため、現実世界のライブと比較して、音自体を楽しむことはできない
ただこの3点は、他のメタバースのイベント(音楽、ファッションなど)でも感じる課題であり、今回の「メタバース・ミュージック・コンサート」だけの課題ではないと思います。
まだまだメタバースでのイベントに関しては、黎明(れいめい)期なので、参加者も少なく、課題が多いのが現状です。
だからこそ、寛容な気持ちで参加者が、一緒にイベントを作り上げていくマインドがとても大事だと思います。積極的に他の参加者にコミュニケーションを取ったり、発信をしていったりと。
無料で、この3組のライブを新しいテクノロジーに触れながら体感できた。それだけで、素晴らしい体験だったと感謝の気持ちで締めくくるとします。
おまけ:TERIYAKI BOYZの本日のスニーカー
ファッションギークなら、TERIYAKI BOYZのライブパフォーマンス中に気になった箇所があると思います。
そうです。4人の「スニーカー」ですね。
次の映像を1回見て、4人のスニーカーをわかった人。それは相当なギークです。
僕はVERBAL、WISEはすぐにわかりましたが、ILMARI、RYO-Zは悩みました。
(シンプルなスニーカーで、かつ解像度が少し低かったため)
本人たちのライブ告知のインスタ投稿写真を見て、ようやく確信に変わった答えがこちら。
- VERBAL・・・【AMBUSH × Nike】 Air Adjust Force “Light Madder Root and Burgundy Crush”
- ILMARI・・・【Nike】 Air Force 1 “White”
- RYO-Z・・・【Vans】 ERA “Black/White”
- WISE・・・【AMBUSH × Nike】 Dunk Hi “White/Black”
4人のスニーカーすべてわかった人、お見事です。
まとめ
今回は「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)のメタバース・ミュージック・コンサート」についてのルポタージュでした。
最新のテックトレンドを感じることができるSXSWですが、今回のようなメタバースのイベントは、気軽に参加できそうだと思っていただけたのではないでしょうか。
「メタバース」という言葉自体、よく聞くワードになってきたかと思いますが、まだまだ実際に遊んでいる人やビジネスに活用している人は多くありません。
このような黎明(れいめい)期だからこそ、この整っていない時期を体感することにすごく価値があると思っています。
ぜひ、興味のある人、どこかのメタバースで遊びましょう。
では、また。