2018年に〈DIOR(ディオール)〉のメンズ・アーティスティック・ディレクターに就任してから、さまざまな功績を残し続けているKim Jones(キム・ジョーンズ)。
Travis Scott(トラヴィス・スコット)とのコラボシューズや、〈Denim Tears(デニム ティアーズ)〉とのコレクション“DIOR TEARS(ディオール ティアーズ)”のリリースなど、ストリート出身のKimならではのアプローチで、ファンを魅了し続けています。
そんなKim率いる〈DIOR〉が、NFT付きのフィジカルスニーカーを発売したのはご存じでしょうか。
〈DIOR〉が発売したNFT付きのシューズ「B33」は、フィジカル・デジタルの両方で価値を提供するスニーカー。
世界470足限定で、シリアルナンバーが入り、スニーカーにはNFCチップが組み込まれています。
2023年にはいり、〈Louis Vuitton〉や〈Tiffany & Co〉などのラグジュアリーブランドや、〈Nike〉や〈adidas〉などの世界的スポーツブランドまでが、フィジカルとデジタルを融合しながら新しい価値提供をするべく、様々なweb3への取り組みを進めています。
そんな中での、今回の〈DIOR〉のNFT付きのフィジカルスニーカーの発売。
今回は、そんな〈DIOR〉が発売したNFT付きシューズ「B33」について、解説していきます。
DIORのNFT付きスニーカー「B33」とは
〈DIOR〉は、2023年7月6日に世界470足限定のデジタルツイン機能付きスニーカー「B33」を発売しました。
発売価格は165,000円(税込)で、7月20日現在、“JP 26”サイズのみ完売しており、それ以外のサイズは買える状況です。
その後、第2弾として、デジタルツイン機能が付いていないデジタル証明書のみ付属する「B33」をリリースしています。
Kimらしいストリートマナーにのっとった、スケートシューズのようなデザインが特徴的なスニーカー。
「ラグジュアリー」×「ストリート」のデザインが好きなギークにとっては、クローゼットのシューズボックスに置いておきたい1足ですね。
そんな〈DIOR〉からリリースされた「B33」には、2種類あります。
- B33スニーカー(デジタルツイン機能付き)
- B33スニーカー(デジタルツイン機能なし)
B33スニーカー(デジタルツイン機能付き)
デジタルツイン機能付きの「B33」は、上記画像の配色のモデルのみリリースされています。
470足限定でオンラインブティック限定で発売されているスニーカーです。
ここでいうデジタルツインとは、物理的な〈DIOR〉製品を譲渡不可能な非代替性トークンの形でバーチャル空間上に再現したものです。
「B33」デジタルツインの所有者は、公式発売前に〈DIOR〉の季節限定製品に先行アクセスできるほか (2024SSコレクション以降)、専用のスナップチャットフィルターなどの限定サービスを利用できます。
この470足限定のスニーカーは、デジタルツイン機能が付いた上で、デジタル正規品証明書も付属しています。
デジタル正規品証明書は、スニーカーのソールの内側に内蔵されたNFCチップから取得が可能です。
NFCチップから、プラットフォームにアクセスすることで、デジタル正規品証明書を入手できるほか、証明書の所有者には、今後発表されるコレクション関連のニュースを特別に配信するサービスもついてきます。
スニーカーにNFCチップを埋め込み、そこでデジタル正規品証明書を発行する方法は、すでに〈Nike〉や〈adidas〉など多くのブランドが導入しています。
また、洋服にNFCチップを埋め込む〈MNTGE〉のような取り組みも増えており、NFCチップを利用したフィジカルとデジタルの融合は、さらに普及していくことでしょう。
〈DIOR〉の親会社であるLVMHが、FortniteやUnreal Engineで知られるEpic Gamesとの戦略的パートナーシップを発表したことからも、この「B33」がLVMHがつくるメタバース空間で着用を想定されている可能性も考えられます。
まだまだメタバース人口が少ない現状で、こういったデジタルツイン機能付きのスニーカーを発売するあたりからも、ラグジュアリーブランドにとって、デジタルとの融合は「待ったなし」感がありますね。
B33スニーカー(デジタルツイン機能なし)
デジタルツイン機能が付いていない「B33」は、上記画像の通り、7種類のスニーカーがリリースされています。
販売価格は、以下のとおり。
- 「DIOR TEARS B33 スニーカー」・・・165,000円(税込)
- 「B33 スニーカー」・・・146,000円(税込)
デジタルツイン機能が付いていない「B33」に関しても、NFCチップは搭載されています。
これにより、偽物が2次市場に出回るリスクは、かなり軽減していくでしょう。
偽物をつくる業者は、安いコストで偽物をつくり、利益を上げるのが一般的です。
NFCチップを本物のチップと同様のクオリティでつくり、埋め込むコストを考えると、偽物が出回る可能性は、限りなくゼロに近づくでしょう。
DIOR TEARS
デジタルツイン機能が付いていない「B33」には、2023AWシーズンの目玉コレクションの1つ『DIOR TEARS』モデルが含まれています。
『DIOR TEARS』は、〈Supreme〉のクリエイティブ・ディレクターを務めるトレマイン・エモリーが、2019年にスタートさせたブランド〈Denim Tears〉と、〈DIOR〉のコラボコレクションです。
デニムをベースとしつつ、特殊なジャカードや抜染プリントを施したデザインが特徴。
1950年代~60年代にかけてのアイビーリーグのアフリカ系アメリカ人学生のスタイルや、同時代のジャズミュージシャンたちのスタイルに多大な影響を受けて製作されています。
「ラグジュアリー」×「ストリート」の融合された『DIOR TEARS』は、まさにファッションギークにとって、垂涎(すいぜん)のコレクションですね。
DIORは「NFT」という表現を使用していない
ここまで紹介してきた「B33」ですが、実は〈DIOR〉はNFTという言葉を使ってプロモーションをしていません。
NFTの代わりとして「デジタルツイン」という単語が使用されています。
2023年に入ってから、〈Nike〉や〈Louis Vuitton〉からリリースされているNFTアイテムに関しても、「NFT」という名称を使うことをできる限り避けて、プロモーションしています。
その理由としては、各ブランドがNFTへの取り組みを強化する一方、できる限り顧客に難しいイメージをもたれて、敬遠されてしまうリスクを避けるためでしょう。
NFTとは、「代替不可能なトークン」のことを指します。
偽造や改ざんが不可能な「ブロックチェーン技術」によって、唯一性をもたせたデジタルデータであることが最大の特徴です。
NFTには、「デジタルアート」「デジタルファッション」「ゲームアセット」「動画」「音楽」「メタバースの土地」など様々な種類があります。
その様々なデジタルデータの所有者を明確にできるのがNFTの魅力です。
詳しくは、【超初心者でも簡単にわかる】NFTとは?仕組みや始め方をファッションギークにむけてわかりやすく解説で画像付きで解説しています。ぜひそちらも読んでみてくださいね。
NFTの使用用途がますます拡がりを見せているがゆえに、NFT初心者にとっては、NFTを理解するのが難しくなっている現状があります。
そのため、今後も各ブランドは「NFT」の仕組みを利用しながら、「NFT」という言葉を避けてプロモーションしていく流れになっていくかもしれません。
なんにせよ、仕組みとしての「NFT」は今後ますます利用されていくことになるでしょう。
おわりに
今回は、〈DIOR〉が発売したNFT付きシューズ「B33」について解説してきました。
〈DIOR〉として、初めてNFTの仕組みを利用したアイテムがこの「B33」です。
世界のさまざまなブランドがNFTやメタバースの「デジタル」と、現実世界の「フィジカル」を融合したプロジェクトや取り組みを推進している中での、今回の〈DIOR〉からの「B33」のリリース。
ここからますます、こういったフィジタル(現実世界とデジタル世界を融合させた状態)のプロジェクトや取り組みは増えていくでしょう。
引き続き、この「channel IVY」では、ファッションのフィルターを通したweb3情報をわかりやすい文体で解説していきます。
ぜひ、また読みにきてくださいね。