2021年頃からよく目にするようになった言葉、「メタバース」。
わかりそうでいまいち実態の掴みにくい言葉ですよね。
ファッション業界の人は、とりわけ感度の高い人が多いので、こういったバズワードに対して興味があると思います。
ただ実際は、「結局のところ何がなんだかわからない…」「難しそう…」「自分とは関係ないな…」という理由でメタバース空間に訪れた人はあまりいないのではないでしょうか。
今回は、そんな「メタバース」に興味はあるけど、そもそも「メタバース」って何なの?という人向けに、「メタバース」を解説していきます。
この記事はこんな疑問をもつ人にオススメ
- メタバースに興味はあるけど実際のところよくわからないな
- ファッションは好きだけど、デジタル分野は苦手だな
- ファッション×メタバース、これから盛り上がるのかな
僕は、2022年から複数のメタバース空間で遊ぶようになりました。
最初のきっかけは、2022年3月の「メタバースファッションウィーク」です。とはいっても、そのイベントの存在を知ったのが開催終了後だったため、リアルタイムで体験することはできませんでした。
VOGUEの記事を読み、「うわっ、面白そう!」と思い、Decentraland(ディセントラランド)について調べたところがメタバースの入り口です。
現在では、Fortnite(フォートナイト)やRoblox(ロブロックス)といったゲーム系メタバースでも遊ぶようになり、すっかり現実世界とメタバースを行き来する生活になりました。
僕自身、新しいテクノロジーやWeb界隈の新しいトピックには元々興味があるので、メタバースについても色々と本を読んできたのですが、どうやら「ファッションの未来」と「メタバース」も繋がりそうだぞ、と思い始めています。
実際に、2022年に刊行された「メタバース さよならアトムの時代」「世界2.0 メタバースの歩き方と創り方」「テクノロジーが予測する未来」「60分でわかる! メタバース 超入門」「メタバースとWeb3」などを読み、複数のメタバースを体験(遊んでいただけですが…)したことでわかったことがいくつもありました。
今回はそれをもとに「メタバースとは?」を出来るかぎりわかりやすくお伝えします。
メタバースとは?
メタバースとは、「インターネット上につくられた3次元の仮想空間」のことを指します。
メタバースではユーザー自身が作成したアバターを操作することによって、空間内を自由に行動したり、空間自体を作成することが可能です。
またメタバース空間では、世界各国の人とコミュニケーションを取ったり、1人でのんびりしたり、ビジネスを行ったりもできます。
オンラインゲームとメタバースの境界線は曖昧ではありますが、channel IVYでは『なんらかの価値交換や経済活動が行われている仮想空間』をメタバースだと定義づけしています。
世界的に見ても最高の人材と多くの資金をもつ「Apple」や「Meta(旧称: Facebook)」が、将来有望と読んで兆円単位の投資を確定している現状からも、これからニーズはさらに高まり、生活に溶け込んでいくことはほぼ間違いないのではないでしょうか。
メタバースって、VRゴーグルがないと遊べないよね?
メタバース体験にはVRゴーグルのようなものが必要と思われるかもしれませんが、PCやスマホでもメタバース空間に入ることができます。
基本的にはどのメタバースも、VR端末・PC・スマホのマルチデバイスに対応したプラットフォームです。
僕自身、VRゴーグルは持ってますが、普段はPCからメタバース空間にログインしています。
このようにメタバースとは、さまざまなデバイスからアクセスできる「人々が自由に行動できる3次元仮想空間」であると言えます。
メタバースの意味
「メタ」(meta=概念を超える、上位概念を指し示す)+「ユニバース」(universe=宇宙)を組み合わせた造語です。
このメタバースを直訳すると、「高次元の宇宙、宇宙を超越したもの」となります。
この「メタバース」という言葉は、1992年にアメリカの作家ニール・スティヴンスンが「スノウ・クラッシュ」という小説の中で初めて使用した言葉です。
今から30年以上も前から存在していた言葉なんだね。
2021年にFacebookが社名をMeta(メタ)に変更したことで一気に「メタバース」という言葉が普及しました。
ただ言葉としては30年以上も前から存在したのです。
メタバースの世界観が描かれた映画
メタバースの世界観を理解するために一番簡単な方法は、映画を見ることです。
映画には、映像や音楽、ストーリーなどが盛り込まれているので、楽しみながら鑑賞でき、理解の助けになります。
メタバースの世界観を描いたオススメ映画は4映画。
- マトリックスシリーズ(1999年~、現在4作目まで公開)
- サマーウォーズ(2009年公開)
- レディ・プレイヤー1(2018年公開)
- 竜とそばかすの姫(2021年公開)
どれもメタバースの到来を予感させる内容となっており、これらを見るだけでメタバースのイメージが沸いてくると思います。特に「竜とそばかすの姫」は、日本のファッションブランドである「アンリアレイジ(ANREALAGE)」が主人公「ベル」の衣装をデザインしたことでも話題となりました。
アンリアレイジ(ANREALAGE)とNFTファッションに関しては、NFTファッションで先陣をきる国内ブランド3選【ファッションギーク向け】で詳しく解説しています。ぜひ読んでみてくださいね。
メタバースって何?どんな世界なのかな?と疑問に感じている人は、まずは映画でメタバースの世界を体験してみると良いでしょう。
メタバース × ファッションの可能性
「メタバース」と「ファッション」は非常に相性のいい組み合わせです。
メタバース上でのファッションウィーク開催、メタバースをテーマにした映画の衣装をアンリアレイジがデザイン提供、またユニクロがマインクラフトとコラボを行ったりと…。何かと「メタバース」×「ファッション」のトピックを目にする機会が増えてきたと思います。
「メタバース」×「ファッション」に可能性がある理由は、大きく2つあります。
メタバース×ファッションに可能性がある理由とは?
1つ目は、名だたるラグジュアリーブランドや〈Nike〉などのスポーツブランド、また国内でも〈UNIQLO〉から〈AMBUSH〉まで多くのファッションカンパニーやブランドが、メタバースプラットフォームに続々と参入していることです。
世界のビッグブランドが精力的に参入したり、投資を行っている様子を見る限り、メタバースとファッションの融合の流れは増す一方だと思います。
実際、2023年3月にDecentraland(ディセントラランド)上で行われたメタバースファッションウィークでは、世界中から多くのファッションギークが参加したことで話題となりました。参加ブランドは、〈Dolce&Gabanna〉や〈COACH〉、〈adidas〉などラグジュアリーブランドや世界的スポーツブランドまで幅広いラインナップ。
今後のメタバースファッションの可能性を感じることのできるイベントとなりました。
(メタバースファッションウィーク 2023の体験ルポは下記の記事で書いています。ぜひ読んでみてくださいね。)
メタバース上でのみ完結するファッションビジネスが主要になる未来はなかなか想像できないですが、物理現実(現実世界)と仮想現実の世界が融合したファッションビジネスの盛り上がりはすでに始まっています。
2つ目の理由は、ファッション業界が抱える環境への負荷や廃棄問題の課題を解決できることです。
ファッション業界は、消費エネルギーや資源、廃棄の問題などによる環境への負荷の課題に対して、なかなか解決策を見いだせない状況となっています。「持続可能な開発目標(SDGs)」に対しての解決策の1つとしてもデジタルファッションの注目度は増す一方です。
2018年に発覚した、〈BURBERRY〉の売れ残り焼却処分問題に関しても、ブランドだけの問題ではなく、業界構造の問題であり、現実世界でのファッション業界は課題が山積みです。
その点、メタバースで着用するアバターファッションやスキンは、その製造にリアルな素材やエネルギーを必要とせず、店頭でのセールや廃棄処分もありません。デジタルファッションを購入することは、無駄や過剰消費の削減を促す可能性があるのです。
実際に周りの友達でデジタルファッションを購入している人はまだ少ない気がするけどな…
2021年10月にFacebookがMetaに社名を変更したことで、メタバースへの興味・関心は一気に高まりました。しかし、実際にメタバース空間で遊んだり、NFTを所有している人はほんの一部だと思います。
「興味はあるけど、よくわかっていない」というのが正直なところではないでしょうか。
けれども、メタバース市場の今後の成長は疑う余地がありません。
メタバースの国内市場規模は、2022年度の国内1825億円を見込み、2026年度には1兆円を超える規模にまで成長すると予測されています。(※株式会社矢野経済研究所「メタバースの国内市場動向調査を実施(2022) https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3068)
世界の多くのファッションブランドが参入をしており、アパレル業界が抱える問題の解決の糸口になる「メタバース」。
ここからもわかる通り、「ファッション」×「メタバース」の相性は非常によく、今後ますますデジタルとの融合が進んでいくでしょう。
メタバースプラットフォームの種類
メタバースのプラットフォームにはそれぞれ特性があります。
その特性は、大きく分けて3つです。
- ソーシャル(SNS)系
- ゲーム系
- クリプト系
僕がおすすめするプラットフォームについては、メタバースのおすすめプラットフォーム3選【ファッションギーク向け】に詳しく書いているので、ぜひ読んでみてくださいね。
ソーシャル(SNS)系
ソーシャル(SNS)系メタバースは、イベントやゲームなどを通したコミュニケーションを中心したSNS要素の強いメタバースです。
「cluster(クラスター)」「VRChat」がこれにあたります。
プラットフォーム上には「バーチャル渋谷」などの様々なワールド(部屋・会場のようなイメージ)があり、そこで音楽イベントやファッションのイベントも行われています。また、日産自動車のショールームがVRChat上に設置されたり、ポケモンバーチャルフェストというバーチャル空間をcluster上で楽しめたりと、企業やIP(知的財産)コラボが盛んに行われているのも特徴の1つです。
ソーシャル(SNS)系メタバースとコラボレーションしているファッションブランド(企業)は以下の通り。
PF名称 | ブランド・企業・団体名 |
cluster | WIND AND SEA, パルクローゼットなど |
VRChat | BEAMS, アダストリアなど |
ゲームやイベントを通じて、音声チャットやテキストチャット、エモート(表情・エモーション・アバターの動きが連動したアクション)を使用し、リアルタイムでコミュニケーションを取る。それがこのソーシャル系メタバースの魅力といえます。
それにより、メタバース上で気の合う友人ができたり、コミュニティがうまれたりすることも。
メタバースを気軽に体験してみたい人には、まずはこのソーシャル系メタバースがオススメです。
ゲーム系
ゲーム系メタバースは、その名の通り、ゲーム要素の強いメタバースです。
「Roblox(ロブロックス)」「Fortnite(フォートナイト)」がこれにあたります。
プラットフォーム上にある多種多様なゲームをプレイするだけでなく、自分自身でオリジナルゲームを制作・公開をできるのが特徴です。また、ゲームだけでなく音楽ライブ(トラヴィス・スコットや米津玄師など)が行われたり、ユーザー同士でコミュニケーションを積極的にとれるのも魅力となっています。
ゲーム系メタバースとコラボレーションしているファッションブランド(企業)は以下の通り。
PF名称 | ブランド・企業・団体名 |
Fortnite | Balenciaga, Polo Ralph Laurenなど |
Roblox | Gucci, Nike, H&Mなど |
〈Nike〉のようなリアルなスポーツに主軸を置いたブランドが参入していることからも、ゲーム系メタバースへの注目度が高いことがわかります。
ゲーム系メタバースは、世界規模で見て、利用者数の多いジャンルです。今後ますますファッションブランドとのコラボレーションが増えていくでしょう。
ゲーム好きのファッションギークは、ゲーム系メタバースから始めてみることをオススメします。
クリプト系
クリプト系は、暗号資産やNFTなどのブロックチェーン技術で構築されているメタバースです。
web3系やブロックチェーン系と呼ばれることもあります。
「The Sandbox(ザ・サンドボックス)」「Decentraland(ディセントラランド)」がこれにあたります。
クリプト系メタバースは、仮想空間上でお金のやりとりがしやすい=ビジネスがしやすいというのが特徴です。
クリプト系メタバースでは、メタバース内のアバター・アイテムや土地などをユーザーが所有できます。
アイテムや土地はNFT(非代替性トークン)となっており、それらを購入し、所有するには暗号資産が必要です。(遊ぶだけなら暗号資産は不要です)
web3系メタバースとコラボレーションしているファッションブランド(企業)は以下の通り。
PF名称 | ブランド・企業・団体名 |
The Sandbox | Gucci, Adidas, SHIBUYA109など |
Decentraland | Dolce&Gabanna, Etro, メタバースファッションウィーク開催など |
クリプト系メタバースでは、「メタバース上で最大級のファッションウィーク開催」や、「Decentraland内のMetaTokyoエリアで踊っている巨大なきゃりーぱみゅぱみゅのキャラクターと遊ぶ」などのイベントが盛りだくさんです。
クリプト系メタバースとファッションや音楽との親和性は非常に高いのも特徴ですね。
暗号資産やNFTにも興味がある人は、このクリプト系メタバースを利用することをオススメします。
まとめ
ここまでお付き合い頂き、まことにありがとうございます。
今回は「メタバースとは?」について、ファッションのフィルターを通して書きました。
メタバースについて、またファッションとの関係性について、理解していただけたと思います。
メタバースやNFTは難しいイメージを抱いてしまいがちですが、基本を理解し、実際に触れてみることで理解度は増していきます。(理屈抜きにメタバースで遊ぶこと自体が純粋に楽しいのでオススメです)
多くの人に認知はされているけど、ユーザー数が多くない今のタイミングでメタバースやNFTに触れておくことで、新たなチャンスや可能性を拡げることができるでしょう。
ぜひどこかのメタバース空間で僕と遭遇しましたら、一緒に散策しましょうね。